一基のお墓の物語

 蒸し暑い夜に、とっておきの怪談?ではない。半月ほど前から小学校の上の山で「急傾斜地の落石防止」工事が始まった。

 

 現場にはビシャコなどの木が乱立していたが、工事業者がそれらを全部引き抜いたら、かつての「寺屋敷」が出現した。

 

 100年以上前には、ここにお寺があって、熊野詣の旅人を泊めたことがある、という話は、聞いたような、あるいは夢の話かもしれない。

 

 ただ、この寺が火災に遭って消失し、現在の場所に移ったということは間違いのない事実だ。移転後の極楽寺には同級生を含めて4人の子供があり、この地でともに生活したが、今は無住職の寺になって南金屋の法蔵寺の管理となっている。

 

 さて、物好きな私が「お寺の後なら何かないかいな」と、捜索したら、隣の廃屋との境で、一基のお墓を発見した。

 

 そこで工事業者に知らせ、この土地の現在の所有者にも知らせて「100年以上ほったらかしにされたのだから供養して無縁仏に合流してあげたら」と提案したら、話は区の寺役員から工事担当の有田県事務所のM氏に伝わり、法蔵寺住職にも伝わって、9月1日に供養して移設していただけることになった。

 

 なんかほっこりとする気持ちだ。