あれから75年

 午後零時に一分間の黙とうをした。萬ヶ谷家では先の大戦に長男の勇、次男の春次、三男の正治と、彼らの親の傳八の弟、谷夫が出征した。

 

 そして4人のうち二人が戦死した。今の家から北に50メートルほど離れた前の家で、昭和20年に「戦死した」という届けを受けとったヤス(祖母)が、「兄やん死んだんやと」と、弟たちに報告したという話を、何年経っても鮮明に思いだす。

 

 「産めよ増やせよ、そして兵隊に」と、当たり前のように、子供を戦地に送り出していた時代が、実際にあったことを、絶対に忘れてはならない。

 

 想像すら恐ろしいことだが、現代にスライドすれば「私の長男と、弟が戦死した」ということなのだ。