椎の実

 昨日の雨でみかん取りができないので、母ちゃんは在宅。9時前に二人で散歩に出た。県道拡幅工事が行われていて、それを見ながら中村川をさかのぼった。せまい土地なので、道路の確保のために川を動かさないといけない。それはそれで仕方のないことだが、田舎の景色が変わることには違いない。

 狭いところで今の3.5メートルほどの道路が倍になる。それでこそ文明だと、わたし的にはおおいに歓迎する。そんなことを考えながら、猪谷のツーギー谷まで歩き、さらに支流の、今は人も住まない谷に分け入って旧Y家とS家を訪ねた。

 人気のまったくしないY家の手前で「カタカタ」と音がするので注意したら、害獣対策オリに若いシカが入っていて、我々に驚いて暴れたのだった。

 この2軒の家にもかつては学童がいて、小学校と中学校にも通ったのだ。距離にすれば片道3キロほどだが、家に近づくほど狭くて急な坂道は小さな子供にとって、どんな思いだっただろうか。

 この坂道で拾った「椎の実」を帰って炒ったら、初めて食べた母ちゃんが「香ばしくておいしい」とはまった。明日にもまた拾いに行きそうな勢いだ。