半世紀の歴史に一応の幕引き

 T製材所猿川工場が完成して一月になる。機材が徐々に移設され、あるいは新設されて旧工場もあばらやになりつつある。半世紀の歴史を刻む建造物はまるで映画の張りぼてのようにあちこちから初夏の日差しが差し込んでいる。
 かつて、ここは我が家だった。橋詰の一段下がった二階建ての家に私達兄弟姉妹は生まれ育った。いやいや、その前に親父の兄弟(男ばかり)もここで暮らした。昭和28年の紀州大水害で水が家の中を貫通したその日も含めて思い出深い場所である。
 今も工場のど真ん中に我が家が使っていた井戸がある。小学生のころ、五右衛門風呂にポンプで100回こいで送った井戸だ。今の家に移ったあとも、しばらくはこの井戸を使っていた。

【半世紀の歴史に幕を閉じる】

【中央の鉄板の下に今も井戸がある】

【正面から迫ってくる新県道】

極楽寺からの景色】