金のなるビシャコ山

 ここ2、3日陽気に誘われて右にノコギリ左に剪定ばさみをぶら下げて二人でビシャコ山通いである。家の前の山の南斜面に親父たちが開墾した段々畑が15段ほどある。かつてはみかんを植えていたが、もう20年ほど前に全部切り倒して、畦ごとに自生したビシャコの木が大きく育っている。この木に這い上がるかずら類を取り除く作業である。ビシャコという名は非榊(ヒサカキ)や姫榊あるいは緋榊から来たと言われているが、榊は神事に用い、ビシャコはこちらでは仏事用である。榊、ビシャコ、シキミを生業にしている家が何軒かある。母の実家もそのひとつで、お盆や彼岸や年末にはお墓に備える組花を作る内職が母の元へ舞い込んでくる。その材料が不足したときには自家のビシャコを切って調達するのだ。
 ABCラジオを聴きながらビシャコに這い上がるかずらの根っこを見つけてはさみで切り、這い上がった先を引きずり下ろす。ついでに密集した幹をノコギリで間引いて整える。すぐに汗ばんできて1枚2枚と服を脱いでいく。翌朝のベッドでは必ず二人とも「腕が痛い、腰が痛い」と言っている。