ぬーぼーな俺

 今年は出来がいいというのでヌーボーを買いに行った。「燦」という湯浅ではおしゃれな命名の店がオークワの隣にあって時々利用させてもらっている。この店のマスターが今年は3種類を取り寄せたと言ったので、それぞれ一本ずつ頂いた。店頭にはそれぞれ御託を書いて並べていたがメモするまでもなく持ち帰ったらすべてフランス産だった。
 帰ってすぐに、そのうちの一本を開封して味わってみた。今年は、森園のくずぶどうでマガシャンワイナリーを経験したのでテイストにはちょっとうるさい。一本目は写真の左の奴。

 「よくぞ、おフランスからこの津木の地へボンジュール」とご挨拶をして一口頂いた。ふくよかな香りが鼻腔をくすぐりながらブルゴーニュの乾いた風を運んでくる。どう?この詩的な表現。グルメリポーターの彦麿呂が「味のデパートやあ!」などと叫ぶ安っぽいものではない。
 自分でワインを作ってみて初めて知った。ワインは決してガブ飲みするものではないということを。製品にはすべて行程があって、それぞれの産地のお百姓(フランスでも?)が手間暇かけて、自然に浮遊する麹菌とコラボして出来上がってくるものだ。その色、香り、一口すすった時の複雑な風味、そして最後にアルコールの強さ。世界中のすべてのワインにそれぞれの自己主張があって当然だ。その摩訶不思議な飲み物に出逢えた幸せに今浸っている。