朝早くに、中組組合長のKさんが来た。何事かと思ったら「Sさんが亡くなった」という。「ええっ、つい最近まで軽トラに乗って毎朝夕、稲の見回りをしてたのに」。
落合区は年々戸数が減って、現在23戸だ。それを奥組、中組、西組という小班で運営している。
いずれも少ない戸数だが中組もわずか7戸、そのうちの家主が76歳で身罷った。残されたのは妻と年老いた90代の母だ。
9月の初めに、今年も彼が育てたお米の収穫をしていたのに、そういえばコンバインに乗っていたのは息子さんだったのか。
この地に婿入りして仲間となり、JRを退職後は学校給食の運転手や、町役場の夜間留守番などの仕事を続けていた。年齢を違う若作りで、いつも笑顔を絶やさず区の役員もいとわずに引き受けてくれる人気者だった。
逸話は「山で草刈りしてて、ちょっと一服しょうかとおもてタバコ取りに行ったら、煙あがっちゃたんよ。なんかいなとおもたら、なんとサルがたばこ吸うちゃったんよ」という話で何度も笑いこけた。
「絶対うそやろ。いったいサルがどうやってライターの火いつけたんよ」と皆が疑ったが、真実は明かされないまま向こうに持って行ってしまった。