山本五十六

 この冬一番の寒さだった。ナナもかなり復調してきたがはしゃぐところまではいかない。最低限の散歩で十分のようだ。家でちぢこまっているのも癪に障るので一人で和歌山市まで走って映画「連合艦隊司令長官山本五十六・太平洋戦争70年目の真実」を見てきた。かつて拾い読みした中で、パールハーバーの奇襲作戦は米軍に察知されていたのでは、というくだりがあったが、いるはずの空母が一隻も居ずに緒戦で「大打撃」を与えられなかったのが誤算だった。 次第に戦況が悪化する昭和18年に、山本がラバウルから戦線を視察に行くと言う打電が傍受されて待ち伏せた米軍機に打ち落とされたことも、史実であろう。調査を重ね忠実に丁寧に作られた作品だと思う。したがって全編淡々としてドラマチックな涙を流せる場面はない。
 山本が死んで2年後に、彼がもっとも望んでいなかった形で終戦を迎えた。「この戦で兵と民間人を併せて300万人が亡くなった。その90%は山本の死後2年間で亡くなった」とナレーションは語った。帝国の最後のあがきは「撃ちてしやまん」の突撃精神そのものであったのか。