「金融腐食列島シリーズ」などで有名な経済小説家の高杉良が書いた「青年社長」を読んだのはもう9年も前になるのか。関東地区のJRのほとんどの駅前にある「居食屋和民」の創立者だ。現在の社名ワタミフードサービスは20代で起業した渡美商事に由来する。氏は明治大学を卒業後コンサルタント会社に就職し経理を勉強後退社、起業資金300万円を貯めるために1年間佐川急便のセールスドライバーとなった。当時の佐川のSDたちは裏に負債や何らかの傷を持っている者が多く、そこに入ってきた大卒に露骨な嫌がらせが続いた。仕分けの荷物が頭に飛んでくる時もしょっちゅうだったが、やがて人柄が彼らを更正させていく。「私の夢には時計が付いている」と、計画した年限を違わずに売上目標を達成し、店舗数を増やし、株式の店頭公開、上場と着実に夢を実現させていく。
最近は教育関係の団体の理事長を務めたり、コメンテータとしてマスコミに登場している。高杉が「なぜ実名で青年社長を書いたのか」と聞かれて「それは発言に嘘が書けないから」と答えている。今、日本の方向性を指し示すには最もふさわしい人物だと私は思っている。