読み終えた直木賞

 川越宗一の「熱源」を読了した。最後に「この物語は史実をもとにしたフィクションです」とあるように、知っている人物が何人か登場する。

 特に舞台がサハリン(樺太)で、札幌に勤務していた頃に興味を抱いて本を読み漁ったアイヌが主役になっていて、アイヌ神揺の知里幸恵アイヌ語研究の金田一京助が出てくる。また、南極大陸の極点を目指した白瀬矗、彼を支援した大隈重信早稲田大学創設者)も顔を出す。

 昭和20年8月15日、日本は太平洋戦争で全面降伏したがサハリンでは侵攻したロシア軍との戦いが続いていた。双方とも終戦を知りながらもだ。逃げ惑う日本人やアイヌたちを、ロシアの戦闘機が機銃掃射して、たちまちに大勢の死傷者がころがる。

 結局、後出しじゃんけんのロシアが、樺太を奪ってしまった。国際的ルールもあったもんじゃない。「勝ったものが勝ち」で、それが戦争の本質だ。